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「知らなかった」では済まされない 薬機法違反の罰則とリスク①

あなたはInstagramやYouTubeを見ていてこんなことを思ったことはないですか?

「フォローしているインフルエンサーさんが急に特定の化粧品をゴリ押しし始めた。」
「飲むだけで痩せる?このYouTuberさん人気みたいだけど、言っていることちょっと大袈裟だな。」

もし、その発信者が効果・効能について語っていて、それを保証するような表現をしているならば、薬機法という法律に違反し、罰則を受ける可能性があるといえます。

薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で、医薬品や医薬部外品、化粧品や健康食品やサプリメント等について、製造・販売・安全対策まで規制し、その適正化を図ることを目的としたものです。

その薬機法第66条には「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」と記載されており、広告を目的として発信されている場合には、薬機法に抵触しない表現のチェックが必要となります。

今回の記事では、商品レビューやPR案件を取り扱うインフルエンサー・YouTuberの方に、「知らなかったでは済まされない薬機法違反の罰則とリスク」について解説いたします。

インフルエンサーやYouTuberの方だけでなく、関連商品を取り扱う事業主や広告主、広告代理店の方も、ぜひご覧ください。

■2021年8月の法改正

薬機法とは、次の各種製品に対して有効性や安全性を確保するために定められた法律です。

  • 医薬品
  • 医薬部外品
  • 化粧品
  • 医療機器
  • 再生医療等製品

課徴金制度の追加

分かりやすくいうと「医薬品でもないものを、まるで医薬品のような効果効能があるような表現の商品が蔓延しないよう規制するもの」ということになります。
近年、ネット広告市場が拡大傾向にある中、効果効能を大袈裟に表現するような虚偽・誇大広告が増えてきており、消費者保護の観点から問題視されてきました。

薬機法には、これまで課徴金制度がなく、起訴され有罪とならない限り罰金が課せられることはありませんでしたが、2021年8月から課徴金制度が導入されることになりました。

これにより、違反者は課徴金対象期間中における該当商品売上高の4.5%を課徴金として支払わなければならなくなります。

(課徴金納付命令)
第七十五条の五の二 第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という
。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

2.前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日 (同日前に、課徴金対象行為者が、当該課徴金対象行為により当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置として厚生労働省令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に課徴金対象行為者が当該課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)をいう。
3.第一項の規定にかかわらず、厚生労働大臣は、次に掲げる場合には、課徴金対象行為者に対して同項の課徴金を納付することを命じないことができる。
一.第七十二条の四第一項又は第七十二条の五第一項の命令をする場合(保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合に限る。)
二.第七十五条第一項又は第七十五条の二第一項の処分をする場合
4.第一項の規定により計算した課徴金の額が二百二十五万円未満であるときは、課徴金の納付を命ずることができない。

引用:厚生労働省

■薬機法に違反する行為

具体的に薬機法違反となる行為とはどのようなものか解説していきます。

こちらは「医薬品等の広告規制について」に記載されています。

第66条 誇大広告等

(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2.医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3.何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

引用:厚生労働省

誇大広告に関する規定ですが、「何人も」と記載の通り、広告主だけでなく、発信にかかわる広告代理店や制作会社、インフルエンサー、記事を作成するライター等、対象となる商品の広告に携わるすべての人が、処分の対象となるということを指しています。

例えば、仕事の依頼を受けたインフルエンサーの方がすでに事業者側が発信している表現と同じ表現なら問題ないと考えてよいか?と、言われればそうではありません。
そもそもの表現自体が誇大広告である可能性もあるため、自身でそこを見極める必要があります。

「そんなつもりじゃなかったのに…」ということは通用しないため、十分注意してください。

第67条 特殊疾病に使用される医薬品又は再生医療等製品の広告方法の制限

(特定疾病用のお薬品及び再生医療等製品の広告の制限)
第六十七条 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。

2.厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。

第68条 承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

引用:厚生労働省

最近でも、サプリメントの広告で「新型コロナウイルス対策」と表示していた企業が薬機法違反に該当するとして、書類送検されています。

健康食品やサプリメント類は、特定保健用食品や機能性表示食品等認可を受けているものを除き、未承認医薬品にあたりますので、効果・効能に関する広告は禁じられています。

これは消費者の立場になれば分かりやすいですが、単なる健康食品でも、医薬品のような効果・効能がうたわれている商品は魅力的に映りやすく感じると思います。
誤った表現で販売している商品を扱う会社が、不当な利益を得るをことを規制する内容が第68条には記載されています。

ちなみに、薬機法では以下の要件を満たすことが「広告」だといわれています。
誘引性:誘引する意図が明確
特定性:特定の商品名が明らか
認知性:一般人が認知できる状態

これらに触れない個人の意見や感想であれば、SNS等で発信されていても表現の自由とされ、基本的には問題はありません。
具体的には、その「商品の告知を行うことで対価が得られる」場合に、広告と判断される可能性があると覚えておいてください。

■薬機法違反の罰則とリスク

薬機法違反の罰則

  • 行政指導
  • 課徴金
  • 刑事罰

行政指導とはその名の通り、行政が行う是正措置を指します。
指導を受けた事業主は、違法状態の是正と報告を求められます。

課徴金については、前述の通り「違法に得た売上の没収」のことを指します。
薬機法は事業者だけでなく「何人も」(=関連したすべての人)が対象となるため、まだ事例はないものの、場合によっては制作会社やインフルエンサーが違約金を請求される…ということ起こりうるものとして頭に入れておいてください。

最後に、最も重い処分として、刑事罰が課せられることもあります。
第66条、第68条に違反した場合の刑事罰は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金(または併科)となります。
それ以外にも、販売・授与等の禁止(第55条)等、告知だけでなく販売までにかかわった場合には、更に重い刑事罰が科せられる可能性もあります。
重ねてにはなりますが「知らなかった…」から許されるものではないため、意図せず犯罪者になってしまうこともあるので注意が必要です。

薬機法違反のリスク

  • ブランドの毀損

ブランドの毀損、特に多くのインフルエンサーの皆さんからすると、フォロワーとの信頼関係は重要と考えていると思います。
一時的にフォロワーが減るだけならまだしも、批判的なコメントやイメージの悪化によって、長い時間をかけて構築してきたフォロワーとの関係性が壊れてしまっては、人によっては生活にも影響する大きなリスクとなるといえるでしょう。
それは、普段の投稿がPR案件ばかりに偏りがちになったり、信憑性や今までと関連性の低い投稿が続くことで起こりえます。

特に、薬機法違反のようにおおやけに罰則を受けてしまうと今後の活動への影響が懸念されるため、「SNSの投稿による炎上リスク」については、細心の注意を払うことをおすすめします。

■まとめ

薬機法のリスクについてまとめてきましたが、基本的に薬機法は消費者を守るためにあるため、多くの人からすると安心・安全のための法律となります。

対象となる商品を「広告の意図をもって発信する際に注意が必要」ではありますが、商品や薬機法を正しく理解していれば問題にはなりません。

逆に、あまりに薬機法を意識しすぎて、商品の魅力が伝わらない発信となってしまっては本末転倒です。
本来商品に魅力があるにも関わらず、当たり障りのない表現でしか発信されなかった場合には、その商品を欲しいと思っている方に響かないでしょう。
それではあなたをフォローしている方や、あなたに期待して広告を依頼してくる広告主の、どちらの期待にも答えられないものとなってしまいます。

リスクを最大限回避しつつ、あなたらしさを損なわない発信を行うことが今後重要となってきます。
もし今まで「なんとなく・・・」で対象となる商品を発信してきた場合には、これからは「商品についての理解と薬機法についての正しい知識」が必要と覚えておいてください。

次回は、薬機法違反の事例やリスクを軽減するための対処法について解説いたします。